かすかな記憶の鋸山・一人旅

12/27、予定が何もなく、かつ家族も里帰りしている機会に、記憶にある限り初めてとなる「一人旅」をしてきた。

仕事でどこかに行くついで、という旅はいくらでもあるが、純粋に一人旅は記憶にない。
 
先日美容院に行った時にマスターが、今年は初めて一人で沖縄に帰る(奥様も沖縄なのに)、と言っているのを聞いて突然、僕も一人旅をしようと思い立った。
 
場所は鋸山(のこぎりやま)に定めた。中1の時に、クラスに馴染めない僕と、保険相談員の先生と、保健室にたむろしていた他の数人とで出かけた。しとしと雨の降る中、無数の羅漢像の中を歩いて、神秘的な場所だと感じたのを覚えている。
 
 
先日の台風で鋸山のある鋸南町が甚大な被害を受け、自粛ムードで人も来なくなってしまったと地元が嘆いているというニュースを見た。
車ならアクアラインで東京湾を横切って2時間半。1日旅行にはちょうどいい。
鋸山に決めた。
 
朝7時に出て、通勤ラッシュに巻き込まれながらも海ほたるに到着。しばらくそこでパソコンをいじってから再びドライブ。房総半島に到着し、海を右手に見ながら走ると、1kmに1年程度時代が戻ってゆくように感じる。
 
到着した鋸山での景色は、何度も僕を立ち止まらせた。残念ながらあの日の一番の思い出である千五百羅漢像は先日の台風で道が崩れてしまったとのことで近づけなかったが、電子レンジにかけられているような振動を肌の内側に感じながら、山を歩いた。パワースポットというやつか。
 
予約した宿に向かう途中、海岸を見つけて立ち止まり、しばらくほっつき歩いた。
さらに、少子化で使わなくなった小学校を改装した道の駅に立ち寄ると「復興への近道は被災地でのお買い物」のキャッチが書かれていた。幾らかの買い物をさせてもらった。
 
さて、宿へ。安価な宿を選んだとはいえ、いやはやひどい田舎だ。水回りは全て共有で、洗面所や廊下に並んでいるタイプ。浴場は大人3人がやっと入れる大きさ、かつ、17: 30-21:30しか入れない。階段も急だし、部屋の鍵もかかったんだかかからないんだかわからない。冬だからいいが、夏なら虫が心配で泊まれない。
その辺りでは大きな建物である4階建ての古い建物を家族で切り盛りしているようだが、そこにビジネスセンスはない。
でも人は悪くないのだ。
これは宿ではなく合宿所、そう思えばもう全く問題ない。
 
時は16:30、3階建ての建物の屋上に忍び入ってみると海に向かって沈んでゆく夕日が見えたので、日がすっかり海に沈むまで、冷たい海風に煽られながらそこにいることにした。今日は本当に、自然と神性を満喫させてもらった。
なお、そこから見える家々の屋根には、かなりブルーシートが目立った。鋸南町はまさに復興中だった。まさにその屋上も、柵が倒れてしまっていて、かなり危ない状態だった。
 
海沿いなので海の幸でも出るのかと思った1500円の夕飯は、トンカツだった。しかしなんだか今回はこれもまた楽しい。
 
こんなにいい景色の中に来て、何か考えなくちゃいけないんじゃないか、何か思いついたり思い切ったリラックスのための工夫をしなきゃいけないんじゃないか、と、落ち着きのない意識は問いかける。でも、無意識や体というのは、そんなバタつきを尻目に、意識の知らないところでゆっくりと休んだに違いない。
 
旅をすることは魂の修練になると、確かムハンマドが言ったのだと思う。旅は多分魂にとってマッサージを受けるようなものだ。
 
誰かとする旅は楽しい。仕事で遠くに行くのも楽しい。「一つかしか選べない」なら、僕は「誰かとする旅」や「仕事でする旅」の方を選ぶと思う。でも一人旅でしかできないことがある。それは、好きな遠回りをし、好きな音楽を大音量で聞き、好きな場所で15分も止まってぼーっと景色を見たり、文句を言われずに何枚でも写真を撮ったり、好きな時間に寝たりすることだ。
 
深呼吸すると、まるでその場の景色の全てが体の中に入ってくるようだ。
30年ぶりの鋸山の空気。全てが新しくなる来年の僕の準備をさせてくれた。
 

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▲鋸山山頂景色

 

IMG_4115▲ロープウェイ駅には猫がいっぱい。全然どかない。

 

IMG_6179▲百尺観音。交通安全の祈りがこもっているという。今回の鋸山で最も神秘を感じた場所だ。

 

IMG_7243▲大仏。奈良の大仏より大きく、大仏としては実は日本で一番大きい。

 

IMG_4180▲雲と太陽の競演はいつも震えるほど美しい。

IMG_4192▲巨岩をくり抜いた「通天窟」なるお堂。足を踏み入れるとゾワっとする。場所そのものにはおそらくお寺の人が知っている以上の歴史があると見た(というか、帰りに入り口で聞いたお寺の若い僧侶の知識が中途半端だった)。

▲だあれもいない(スマホなら回ったりスワイプして、PCならドラッグしてお楽しみください。)。

IMG_4201▲海。気が向いては立ち止まる旅。

 

IMG_4213▲目下復興中、という健気さが町中から伝わってきた。

IMG_4241▲部屋。朝ごはんつきで6300円(夕食別)。風呂トイレ洗面所は共同。

IMG_4220▲共同浴場。大浴場でなく、銭湯の趣も特になく。ただの大きめの風呂。アメニティはない。

IMG_4224▲柵が倒れた宿の屋上。ロープでの応急処置が新しいので、先日の台風の被害と思われる。

 

IMG_4232▲屋上からの景色。日が沈むまで10分ほど、ここにいることにした。

IMG_4234▲夕食。1500円。民宿風でもない「合宿所」感満載。中学生の集団もいたようだ。

IMG_4236▲来年のためのリフレッシュに来たので、新年には一足早く日の出も拝ませてもらった。

 

 

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