「キリスト降誕場面像」は「優れたフィクション」。

の時期になるとあちこちでみられる置物や絵画の情景、ネイティビティ・シーン(Nativity Scene)、日本語で「降誕場面」と呼びます。

Nativity Scene Atsugi
家畜小屋にイエスの父ヨセフと母マリア。飼い葉桶に新生児のイエスが寝ており、「東方の三賢者」が供物を持ってきて崇めています。羊飼いが見守り、天使が歌っていて、天には星が輝いている。

これが、ネイティビティ・シーンの標準で、13世紀にイタリアで描かれた絵がオリジナルだと言います。

賢者の供物の一つ、「没薬」。何だろうとずっと思っていたので今年こそと購入してみました。英語でMyrrh(発音は「マー」)、「ミルラ」という名前で買えます。ミルラ-乳香-Myrrh-没薬香水の材料にもなる天然の樹脂だそうで、レーズンと小石の間くらいの姿です。お香と違ってそのままで炊くものではないようで、「ご焼香」と同じように、焼けた炭の上に置きます。


仏壇屋で炭を買ってきてコンロで火をつけ、それを炊き始めるなり、妻お怒り。「すぐ消して全部の窓開け放って!!」


端的に言って臭かったのです。なんというか、人間の鼻水のような感じもします。しかし、その中に確かに香水の元になるというほのかな芳香があります。多分家では二度と炊けません。


カトリックの儀式ではよく使われるとのことで、購入前にカトリックの知人に聞けば手に入ったのかななどと思います。

て、ネイティビティ・シーンはイマジネーション豊かなアーティストのフィクションです。というとがっかりする人がいるかもしれませんが、聖書の記載とはあっていないのです。

新約聖書にはキリストの生誕場面について二人の記者の記事があります。

カの福音書(Gospel Of Luke)では、「飼い葉桶」に生まれたばかりのイエスを寝かせたことは書いてあり、「宿屋に泊めてもらえなかったからだ」という記載があります。が、生まれた場所が家畜小屋だったという記載まではありません。また、そこに「賢者」は登場しません。しかし、知らせの星が輝き、天使たちが、かの「Gloria」を歌うのを聞いた近隣の羊飼いたちが集まります。

タイの福音書(Gospel Of Matthew)の記載では逆に、飼い葉桶も羊飼いも歌う天使も登場しません。一方で、東から来た「天文学者たち」が登場します。しかし、人数は書いていません。賢い彼らは星の動きからイエスの誕生を知ります。

彼らはよりによって、「この地方でユダヤ人の偉大な王が生まれたと星の光から知ったので、どこにいますか?」と、当時のユダヤ人の王様、嫉妬深きヘロデに尋ねてしまうのです。そのニュースを聞いて驚いたヘロデはまず自分の配下の学者を集めて、「その王が本当に生まれたとすると、予言によれば場所はおそらくベツレヘムという小さな街である」ということを知ります。


 すると今度は東方の天文学者を再び呼んで、「どうも場所はベツレヘムらしい。私も新たな王を拝みに行くからあなたたちで見つけて私に教えてくれ」と頼みます。「ちなみに、その星が輝いたのはいつかな?」とヘロデは彼らに尋ね、「2年ほど前です」と言う答えを天文学者たちから聞き出します。

天文学者たちはベツレヘムへ旅立ち、マリアと一緒にいるその子供(イエス)を見つけると、大喜びで東方から持ってきた供物を捧げます。つまり、この時イエスはおそらく2歳くらいです。天文学者たちはイエスの生誕に居合わせたわけではないので、ネイティビティ・シーンの描写とは一致しません。

らの捧げた供物が「お香」「金」「没薬(ミルラ)」であったとここに記載があるので、その一つずつを一人の学者に割り当て、「東方の三賢者」というキャラクターの誕生です。

なおこの後天文学者たちは、「ヘロデにはイエスの所在を知らせるな」と神さまからお告げを受け、首都を通らずにこっそりと東方に帰ります。そのことを知ったヘロデは激昂し、残酷にも、ベツレヘムの2歳以下の男子を全て殺させます。

しかし、「ヘロデが死ぬまでエジプトへ逃げろ」とやはり神からお告げを受けていたヨセフ、マリア、イエスの一行はとっくに国外へ出ていました。

これがキリスト生誕についての記載です。

つの供物から「三賢者」を作り出し、飼い葉桶から家畜小屋のイメージを膨らませ、二つの記事の時制を統合して一つのイメージに仕上げる。それを「歪曲」と感じる人がもしかしたらいるかもしれません。しかし僕は、この絵を最初に描いた画家が誰であれ、大変素晴らしいイマジネーションを持ったアーティストだったと感じます。あたかも、ディズニーが眠り姫や美女と野獣の古い物語を映画用に脚本家するような作業に似ていると思うのです。こういう表現手法こそが事実以上に事実を伝えるものになり得ると僕個人は考えます。



その「ネイティビティ・シーン」を描いた一曲が、こちらの、”What Child Is This” 1865年に作られた聖歌です。メロディーは16世紀以前から存在したイギリス民謡「グリーン・スリーブス」です。歌詞に動物たちが登場し、3つの供物も登場するので、これは「聖書の話」から作ったというより「ネイティビティ・シーン」のイメージから作ったように見えます。パワーコーラスアレンジを施しました。

自身がこの作詞で最も感心する部分は、サビ頭のThisの単語が2回繰り返される点です。まさに、この強烈な情景を印象付ける強烈な手法だと感じます。
また、後半ではHaste(急げ)が二度繰り返されます。この歌詞の作りは、もとの穏やか曲調よりも、劇的な物語として全体をスピーディーに仕上げる方が向いているように僕に感じさせました。


お楽しみください。
Soprano, Alto, Tenor の各パートもあり。

Part files: パート学習ファイル & インスト/Instrumental

https://www.youtube.com/playlist?list=PLidlt19cQN7xuZBRivuZchYdo0BunPOvZ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です