不可避! 音楽家のハイブリッド化

DUCはリハを少しずつ再開こそしたものの、今はシンガー同士が距離を取らなくてはならず、マスクで音も聞きにくい。そこで今回、「赤外線同期メトロノーム」を使用して同期をとってみた。

製品に色々と問題は感じるものの、距離をとってビートを共有、という目的は十分に果たせた。人の声だけで行えるアートも、機材のサポートがあって時代に対応できる。

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コロナ禍は音楽家に進化を迫った。進化とは、「環境に適応して生き残る」ことだ。

大学(音大)はオンライン授業を教員に求めたものの、オンライン授業のやり方について大学からインストラクションはない。ほぼ教員任せだ。DUCは昨年からYouTubeに主戦場を移すつもりで諸々オンラインの準備をしてきた。そのため、コロナ禍に襲われた時には僕はある程度準備ができていた。言ってみれば、たまたま準備ができていたわけだ。

オンラインで実務的で魅力的な授業を行うために僕が使用したものは主にYouTubeライブと、そのためのソフト(OBS)とウェブカメラとオーディオインターフェース、LEDライト、グリーンバック(クロマキー)、事前資料としての音源動画、ネット上で学生からの動画を集めるストレージサービス、PDF資料と、プリンターがない学生のためにコンビニでプリントアウトできるパスワードなどなどだ。学生の写真と名簿をプリントアウトして学生に提出してもらったニックネームを記入してゆく。

でも、それらの準備を行いながら、「こんなこと、他の先生方もできるものだろうか?」と常に考えさせられていた。

ピアノや声楽の教員は、学生に弾いている動画を提出してもらい、それに対してレッスンをする形をとったという。そんなこと、誰がやりたいものか。歴史ある音大の先生方だから、老練の現場人が多い。ある先生は、「オンラインなんかで大学教育にふさわしい音楽の演習などできるものか」と憤っていた。

全くおっしゃる通りだ。学生にしたって、800万円もの学費を納めて、パソコンの画面を見ることが授業だと言われたら悲しい。親はもっと悲しい。学費を下げろと文句も言いたいだろう。しかし一方の大学はあれこれとオンラインの準備に投資も手間も必要で、ろくに寝られない職員も出ていることだろう。それで学費を下げろと言われたら辛い。「日本中がいっしょに一度止まってくれるんじゃなきゃオンラインでも授業をやらなくてはならない」のが実情だ。

しかし僕の考えは違う。できることはある。ただ、僕はポピュラーに近いフィールド(ゴスペル/パワーコーラス)からやってきたからできる。クラシックの殿堂である音楽大学の授業に、この嵐の中で息を吹き込む結果をもたらすことができたのはそのためだ。

ポピュラーの世界で当たり前のテクノロジーの活用が、クラシックの大学が生き残るにも必要だ。現場の音楽家もデジタルの世界との融合がなければ生き残れない。音大も教師も、「ハイブリッド化」が鍵になる。

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話は変わって、SyncMetronomeの使用感。

・シンガー同士が2m離れるソーシャルディスタンスの状態で、同期は取れた。希望は持てる。

・同期のために一度接続しなくてはいけない。今回は6機を接続。その接続がかなりわかりにくい。耳に入れる部分をなぜか回転させられるのだが(目的は不明)、回転させている状態では接続ができない。しかし、そのことについての言及が説明書にない。これには参った。

・テンポを変更すると同期が解除されてしまうので、別のテンポの曲を演奏するたびにメトロノームを集め直さなくてはいけない。これにより、かなり使用できる状況が限られる。これは技術的に難しいとしても絶対に改善してほしい部分だ。マスターにしたメトロノームのテンポを変えれば、他のメトロノームも同期するようにしてもらう必要がある。

他人に勧めるかと言われればまだ勧められるようなものじゃない。でも、コンセプトはこのご時世に最高だ。なんとかしてもらいたい。

 

One Comment
  1. ラボ・パーティにおいても、子どもたち同士が場所も空気も共有し、直接ふれあってこそ子どもたちの体験となり、ラボが目ざしてきた教育目的を達成しうるものだという思いは強いです。しかし、現状それは難しく、同じ場所に集ったとしても、ソーシャルディスタンスをとっての活動になります。時にはリモートで行うこともあります。それをマイナスに考えることは仕方のないことですが、それでもプラスの部分はあるので、ブラスを最大限に生かすやり方が必ずあると思うし、頭を柔らかくして対応すべきだと思っています。
    話は変わりますが、2カ月ほど前にリモートで合唱をしました。リモートでみんないっぺんに歌うと遅延が起こって、タイミングがバラバラになってしまいますので、一人ひとり歌ってもらってそれを録音し、コンピュータで合成しました。みんなで集まって合唱する喜びに比べればかなり落ちてしまうことは否めませんが、困難な中でもなんとかやれることに、少し希望を見出しました。

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